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Vol.180. 医療系翻訳タイムズ(連想式医薬英単語5)
-COVID-19と immunosuppression-

重症COVID-19 (coronavirus disease 2019)の患者のうち、
過剰な炎症反応が認められる人々には、
その過剰な炎症反応を抑制する、ステロイドやIL-6 (Interleukin-6)など、
免疫抑制療法 (immunosuppression)が、戦略として有効ではないか、
とする論文が発表されています。
(Lancet, Vol.395, March 28, 2020)

そこで、連想式医薬英単語の観点から、今回は、「抑制する、抑える」を
表す用語を取り上げてみたいと思います。

「抑制する/抑える」を表す英単語は、ざっと挙げてみただけでも、
suppress, inhibit, block, reduce, prevent, impair, control,
restrainなど、けっこうたくさん在ります。

そして、それらが、それぞれ、若干異なる使い方がなされて
いるため、その使い方の違いを今回、お話させて頂こうかと
思います。

まず、“suppress”から。

医薬医療英語の場合、
“suppress”は、「免疫」が絡んだ内容のときに使われます。

いくつか、例文を見てみましょう。

例1.Regulatory T cells: how do they suppress immune responses?
        [制御性(調節性)T細胞:それらはどのように免疫応答を抑制するのか?]

        Cited from:International Immunology, Volume 21, Issue 10,
                          October 2009, Pages 1105–1111,

例2.Regulatory T cells (Tregs), either natural or induced,
        suppress a variety of physiological and pathological
        immune response.
        [自然な、あるいは、誘導された制御性(調節性)T細胞のどちらかが、
      さまざまな生理学的および病理学的免疫応答を抑制する。]

        Cited from:International Immunology, Volume 21, Issue 10,
                          October 2009, Pages 1105–1111,

例3.Mycobacteria target DC-SIGN to suppress dendritic cell function.
        Mycobacterium tuberculosis represents a world-wide health risk and
        immunosuppression is a particular problem in M. tuberculosis infections.
        (...) dendritic cells (DCs) are important in inducing cellular immune responses
        against M.tuberculosis.

        [マイコバクテリアは、樹状細胞機能を抑制するために、
        DC-SIGN(樹状細胞特異的細胞内接着分子捕捉ノンインテグリン) を
        標的としている。
        結核菌は世界規模の健康リスクであり、免疫抑制は結核菌感染症の特定の問題になっている。
        (...) 樹状細胞は、結核菌に対する細胞性免疫応答を誘導する上で重要である。]

        Cited from:J Exp Med. 2003 Jan 6;197(1):7-17.

例4.Immunologic Aspects of Mycobacterial Infections.
        (マイコバクテリア感染の免疫学的観点。)

        Cited from:Clinical Infectious Diseases
                          Reviews of Infectious Diseases, Volume 11, Issue Supplement_2,
                          March-April 1989, Pages S455–S459

次いで、“inhibit”に係る例文を挙げてみます。

例1.Synthetic analogues of fumagillin that inhibit angiogenesis and suppress
        tumour growth
        (血管新生を阻害し、腫瘍増殖を抑制するフマギリンの合成類似体)

        Cited from:Nature 348, pages555–557(1990)

        このように、inhibitは、
        「抑制する」の意味合いはあるものの、
        一般的には「阻害する」と和訳されることが多いです。

例2.Drugs Which Inhibit Prostaglandin Biosynthesis
        (プロスタグランジン生合成を阻害する薬剤)

        Cited from:Pharmacological Reviews March 1974, 26 (1) 33-67;

例3.PPAR-γ agonists inhibit production of monocyte inflammatory cytokines
        (PPAR-γアゴニストは単球炎症性サイトカインの産生を阻害する。)

        Cited from:Nature, volume 391, pages82–86(1998)

それと、「抑制する」「阻害する」などの類語として、
もうひとつ、“block”も記憶しておくことをお勧めします。

例1.Intraventricular anti-cholinergics do not block cholinergic hippocampal
        RSA(Rhythmic Slow Activity) or neocortical desynchronization in the rabbit or rat.
        [脳室内抗コリン作動薬は、ウサギまたはラットのコリン作動性海馬の
        RSA(リズミカルなスローアクティビティ)または新皮質の脱同期を遮断しない。]

        Cited from:Pharmacology Biochemistry and Behavior
                          Volume 5, Issue 3, September 1976, Pages 275-283

“block”は“inhibit”に比して、「ほぼ完璧に阻害する」といったニュアンスがあり、
「遮断する」という和訳が適切な場合もあります。
特に、脳や神経領域では、「遮断する」が適訳となります。

よって、「抑制」の程度としては、“suppress”と“inhibit”は、ほぼ同等、
“block”は、“suppress”と“inhibit”よりは、強い、という感じになります。

「抑制する」の類義語で、さらに記憶しておきたいのは、
“reduce”, “prevent”, “impair”などです。
例示してみましょう。

例1.	A Comparison of Lansoprazole, Omeprazole, and Ranitidine for Reducing
        Preoperative Gastric Secretion in Adult Patients Undergoing Elective Surgery
        (選択的な手術を受ける成人患者の術前胃液分泌を抑制することに関する、
        ランソプラゾール、オメプラゾール、およびラニチジンの比較)

        Cited from:Anesthesia & Analgesia:
                          April 1996 - Volume 82 - Issue 4 - p 832-836

  「術前胃液分泌を減らす/軽減する」と和訳しても良いかもしれません。
  つまり、“reduce”は、原義としては、「数量を減らす」とか
  「程度を軽減する」、という意味合いがあるからです。  


加えて、“prevent”の例文を2つばかり。

例1.	Intravenous γ‐Globulin Infusions in Patients with Hypo‐γ‐Globulinemia.
        Prevention of Adverse Reactions with Corticosteroids
        (低γ-グロブリン血症患者のγ-グロブリン静注。
        コルチコステロイドによる副作用の防止/抑制)

        Cited from:VoxSanguinis (The International Journal of Transfusion Medicine)

例2.Development of Chronic Liver Disease after Acute Non-A, Non-B
        Post-Transfusion Hepatitis.
        Role of γ-globulin prophylaxis in its prevention.
        (急性非A非B型輸血後肝炎のあとの慢性肝疾患の発症。
        その予防におけるγ-グロブリン予防治療の役割)

        Cited from:Gastroenterology, Volume 72, Issue 5, Part 1,
                          Pages 902–909, May 1977


最後に、“impair”です。
例1.	Titanium dioxide nanoparticles impair lung mitochondrial function
        (二酸化チタンナノ粒子は、肺のミトコンドリア機能を
        損なう/抑制する/害する)

        Cited from:Toxicology Letters,
                          Volume 202, Issue 2, 25 April 2011, Pages 111-119

        “impair”は、「臓器/機能などを害する」という意味があるので、
        「損なう」と和訳しても良いでしょう。

例2.	Stent Placement in Patients With Atherosclerotic Renal Artery Stenosis
        and Impaired Renal Function
        (アテローム性動脈硬化性腎動脈狭窄症および腎機能障害患者における
           ステント留置術)

        Cited from:Annals of International Medicine,
                          Articles|16 June 2009


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